ルリキンバエの歩行活動記録装置を構築し、最初に基本的な歩行活動リズムを調べた。実験はすべて20℃の一定温度で行った。歩行活動リズムは12時間明期・12時間暗期(12L12D)の光周期に同調し、活動は明期に集中した。光条件を全暗(0lx)・全明(500lx)・全薄明(1lx)と順に変えると、活動リズムはいずれの条件でも自由継続したがその周期は照度によって変化した。これらの結果に雌雄差は見られなかった。次に、ペースメーカーを光周期に同調させるための光受容器を調べるため、複眼のぬりつぶしあるいは切除を行い活動リズムを2種類の連続した光周期12L12D・13L13Dで記録した。実験にはメス成虫を用いた。無処理・コントロール群の活動リズムは両方の光周期に同調したが、複眼を銀塗料で塗りつぶすと光周期にかかわらず活動リズムは自由継続した。一方、複眼を切除すると活動リズムは12L12Dに同調し、13L13Dには同調しなかった。しかしながら、光周期の変化に伴って活動の周期が変化した。以上の結果より、ルリキンバエ成虫は顕著な概日活動リズムを持つこと、また、ペースメーカーを同調させるための光受容器として少なくとも複眼以外の光受容器が関与することが明らかになった。しかしながら、複眼の"ぬりつぶし"と"切除"の効果にどうして差が生じるのか、その解釈がはっきりしない。今後、複眼の関与を再検討するとともに、脳の部分切除によりペースメーカーの所在を明らかにしたい。
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