研究概要 |
今年度は北海道から九州・沖縄までの演習林を中心に5地点で採集を行ない、モンシデムシ類、オサムシ類をトラップなどの方法で採集した。これらの甲虫にCO_2麻酔を施し、体表からダニ類を採取し、便乗性ヤドリダニ類の日本での分布状況、シデムシに対する選好性テスト、飼育実験、形態解析などを行った。 分布調査の結果、ヤドリダニ科のPoecilochirus carabi G.& R.Canestrini,1882が北海道から九州まで広く分布することが明らかになった。ただし、各地に分布するP.carabiが、単一種であるのか、形態的には区別の難しい同胞種を含んでいるのかは、現在のところ不明である。また、上記のP.carabi以外の未記録種も採集されており、この種類に関しては現在同定中である。 日本に生息するP.carabiが同胞種である否かを検討するために選好性テスト、生活史の違いなど調べた。実験は充分な個体数が得られた北海道内2地点(北大農学部附属苫小牧演習林および檜山演習林)のサンプルをもとに行われた。2地点とも、マエモンシデムシ、ヨツボシモンシデムシの2種のモンシデムシ類が優占し、その体表上には便乗性ヤドリダニ類P.carabiの第2若虫が便乗しているのが認められた。苫小牧のモンシデムシ2種から得られたP.carabiの選好性テスト、生活史特性、形態解析の結果から、各種モンシデムシから採集されたP.carabi間で選好性、形態などに有意な差はなく、同胞種の可能性は低いと考えられた。また、檜山のP.carabi集団は、マエモンシデムシ上で有意に多く、また選好性テストにおいても有意にマエモンシデムシを好むという結果になった。この選好性が季節的に変化するものであるのかどうかは、今回の研究ては明らかにできなかった。次年度は、調査地域を拡大し、各地域での選好性の違い、集団間の形態差などを調べる予定である。
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