古草本類に属するスイレン科植物のコウホネ属コウホネNuphar japonicum、スイレン属ヒツジグサNymphaea tetragona、オニバス属オニバスEnryale ferox、ハゴロモモ属ハゴロモモCabomba carolinianaの発達過程の花芽からmRNAを抽出し、MADS-BOXの保存性の高い塩基配列を基に作ったディジェネレートプライマーを用いて3'race法を行い、MADS-BOXをもった花形成遺伝子のcDNAを合成、その遺伝子の3'側の塩基配列を決定した。そして判明した塩基配列をもとに新たなプライマーを設計し5'race法を行って、遺伝子の全塩基配列の決定を試みた。 本年度は、スイレン科植物を代表する4種から、MADS-BOX遺伝子についておもに3'race法を用いたスクリーニングを中心に行った。その結果オニバスから67個、コウホネ46個、ハゴロモモ46個、ヒツジグサ87個のMADS-BOXを持ったcDNAクローンを単離し、既知のMADS-BOX遺伝子のアミノ酸配列をもとにアライメントしたところオニバス13個、コウホネ14個、ハゴロモモ8個、ヒツジグサ11個にまとまった。これらを既知のMADS-BOX遺伝子とともに近隣結合法により遺伝子系統樹を作成したところAGグループ、AP3グループ、PIグループ、AGL2グループ、AGL6グループ、AGL14グループなどに属する遺伝子の断片であることがわかった。つぎに5'race法をもちいて得られたcDNAの5'側の断片を得ることを試みた、その結果ヒツジグサで1個、コウホネとハゴロモモで2個について遺伝子全長の配列を得ることができた。 また平行してLEAFY相同遺伝子、APETARA-2相同遺伝子の探索も行い4種すべてからLEAFY相同遺伝子の断片を、オニバスとヒツジグサからAPETARA-2の相同遺伝子を得ることができた。今後は3'race法でおもにAP1やAP3/PIなどAクラス・Bクラスの遺伝子のスクリーニングを続けるとともに5'race法による遺伝子全長の配列決定、およびin-situハイブリダイゼーションによる遺伝子の発現と機能解析を進めていく予定である。
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