日本とオーストラリアのササバアヤギヌは、人工受精させるとF_1四分胞子体までは正常に生育するが、その四分胞子から発芽した配偶体は不稔である。両株のrRNA遺伝子のITS領域配列を調べたところ、230塩基中20サイトで塩基置換えが確認された。そこでその領域で特にホモロジーの低い領域(50塩基中6サイトで塩基置換)をはさんだプライマーをデザインし、PCRによりジゴキシゲニン(DIG)標識DNAプローブを作成した。サザンハイブリダイゼーションを行ったところ、日本産ササバアヤギヌをもとに作成したDNAプローブは、日本産ササバアヤギヌのゲノミックDNAを特異的に認識することが確認された。現在、in situハイブリダイゼーションによって雌性配偶体上で発育する果胞子体の核を特異的に染色し、交配後の果胞子体の発達過程を調査中である。 不完全な生殖的隔離を示す嚢果と正常な嚢果の形態を比較するために、水溶性樹脂切片を作成したところ、嚢果内部に発達した造胞糸や果胞子嚢のサイズや核のDNA量に顕著な違いはみられなかった。
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