ゴリラ(Gorilla gorilla)、オランウータン(Pongo pygmaeus)の臼歯咬頭面の写真をフィルムスキャナーでコンピューターに取り込み、ハードディスクに保存。各咬頭の画像から、投射面積、咬頭プロポーションと咬頭の位置を計測し、その変異を集団、亜種、種レベルで比較した。データから、ゴリラの3亜種間の違い、特に、アフリカ西部低地ゴリラと東部の2亜種の違い、が著しいこと、オランウータンでも、2亜種の形態が有意に異なることが明らかになった。このパターンは、ミトコンドリアDNA遺伝子分析結果と一致する。すなわち、ゴリラ、オランウータンともに、初期集団の分岐、拡散後、早い時点で、亜種の祖先集団が遺伝的に隔離され、その間に形態的変化が蓄積されたものと考えられる。このような形態的変化とその固定には、環境・植生の違いに依存する異なる食性への適応が関係している可能性もある。この要素は、特に、現在の亜種間の環境、食性の著しく異なるゴリラの進化過程では、おそらく大きな役割を果たしたであろう。来年度は、チンパンジー(Pan)を含めてより詳細な歯冠形態についても種内変異分析をし、化石ヒト上科をの比較検討を行う。
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