これまで研究されてきたII-VI族半導体超格子はヘテロ構造のバンドオフセットが伝導帯あるいは価電子帯に偏る場合が多く、十分な電子と正孔の閉じ込めが困難であった。青色半導体レーザの実用化のためには、ハンドオフセットのより大きなヘテロ構造の開発が必要である。ZnSe/MgSヘテロ構造は大きなバンドオフセットを持ち、新しいII-VI族半導体デバイス構造として有望である。本研究ではこの系のヘテロ構造の作製と評価を進め、原子レベルで制御された量子井戸箱の作製技術の確立を図り、新しい量子デバイスの開発を目的とする。 MOVPE法を用いて作製したZnSe/MgS超格子の励起フォトルミネッセンス測定ならびに反射スペクトル測定により、強い量子閉じ込め効果により励起子が室温まで安定化していることを確認した。ZnSe井戸層の界面揺らぎによる励起子の局在化が確認され、界面揺らぎによる自然量子井戸箱構造の作製が可能であることを示した。さらに自己組織化によるCdSe、ZnSe量子井戸箱の作製が可能であることを示した。これらの成果により、3次元的に量子閉じ込めした量子井戸箱構造や局在励起子などの強い励起子効果を取り入れた高性能光デバイスの実現が期待できる。
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