2年次にわたる研究の初年度の作業として、以下を開発した。まず、南極観測氷床レーダデータの解析を実施するため、データの計算機処理と理論計算との比較を開始した。このため、今年度は最初にデータ解析研究に必要な計算機環境を整備した。ワークステーションの計算環境を準備したうえで、2周波数(179MHzと60MHz)の氷体内の電波伝搬データを処理した。結果として、当初から狙っていた以下の点が明らかになりつつある。以下に箇条書きで述べる。 1)電波伝播速度と減衰過程の分析から、従来わからなかったMHz帯の氷結晶の複素誘電率を導出した。 2)2周波観測で、巨大氷床の深度帯や流域毎に電波散乱原因が異なることを立証した。すなわち、氷の密度、酸性度、歪み状態により、伝搬特性が異なる。 3)このうち特に、従来知られていなかった「選択的結晶方位」による電波反射機構を検出した。 4)南極氷体の底面付近で、明瞭な電波非散乱帯を発見し、出現メカニズムの分析を開始した。 5)多周波レーダ観測手法で、巨大氷体の、圧密機構、酸性層位、歪み卓越領域、流動機構分布が広域にわかることが明らかになった。 来年度は本研究のまとめに入り、解析をさらに発展・継続し、また、論文出版や学会発表をおこなう予定である。なお、研究成果発表として、本研究立案時に、本研究の基礎として実施していた予備実験の結果論文と、本研究の基礎となった南極でのフィールドワークの報告を、本報告書に記載した。成果の核心部分の論文発表は来年度に実施の予定。
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