研究概要 |
本研究では、希薄磁性半導体Cd_<1-x>Mn_xTeのMBEによる自己形成ドットの成長ならびにその磁気光学特性の研究を目的としているが、今年度はまずCd_<1-x>Mn_xTeの母体である2元化合物の閃亜鉛鉱型(ZB-)MnTeおよびCdTeの自己形成ドットの成長を試み、その光物性の研究を行った。ZB-MnTeドットは、GaAs(100)面上に成長させたCdTe薄膜の表面上に、基板温度300〜320℃で、MnとTeの分子線を同時に(conventional MBE)、または交互に照射する(ALE)という2つの方法で成長させた。前者のMBEの場合は、直径160〜180nm,高さ60〜80nmの円錐状ドットが、また後者のALEの場合には直径55〜65nm,高さ6〜8nmとより小さいサイズのドットが形成された。これらのドットのフォトルミネッセンス(PL)測定により、Mn^<2+>の内殻遷移発光の特性を調べたところ、発光寿命が20〜200nsecと薄膜の場合(〜10μsec)に比べ約2〜3桁程短くなっていることがわかった。 一方CdTeドットは、同じくGaAs(100)面上に成長させたZnTe薄膜の表面上に、基板温度300℃で、CdとTeの分子線を交互に照射するALEで成長させた。直径約20nm,高さ約2.5nmの円錐状のドットが8×10^<10>cm^<-2>の密度で形成された。このCdTeドットの場合には、ZnSe上のCdSeとは異なり、室温で数週間に亘って放置してもドットの形状・密度に変化は見られなかった。CdTeドット表面をZnTeキャップ層で覆った試料のPL測定を行ったところ、ドット中の励起子からの発光と思われる非常に強い発光が観測された。発光の積分強度および発光寿命の温度依存性を、CdTe/ZnTe単一量子井戸とCdTeドットとを比較したところ、後者において(In,Ga)Asドットで観測されているのと同様の、0次元系に特徴的な振る舞いが見られた。
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