研究概要 |
本研究では、希薄磁性半導体Cd_<1-x>Mn_xTeのMBEによる自己形成ドットの成長ならびにその磁気光学特性の研究を目的としているが、今年度は、昨年度のZnTe上のCdTeドットの研究を発展させ、Mnを混入させた(cd,Mn)Te混晶のドットを作製し、その磁気光学効果の研究を行った。Cd_<1-x>Mn_xTeドットの作製はCdTeの場合の成長方法を基本的に踏襲した。すなわちGaAs(100)面上に成長させたZnTeの平坦な表面上に、基板温度300°Cで、cd+MnとTeの分子線を交互に照射するALEで成長させた。成長表面のAFMによる観察結果では、Mn濃度が小さい(【less than or equal】3%)範囲では、CdTeとほぼ同サイズ(直径〜20nm,高さ〜2nm)の円錐状のドットが高密度(〜10^<11>cm^<-2>)に形成されていたが、Mn濃度がさらに増加するとドットのサイズ・密度とも減少し、9%以上ではドットの形成は見られなかった。 Cd_<1-x>Mn_xTeドット表面をZnTeキャップ層で覆った試料の低温(4.2K)でのPL測定を行ったところ、ドット中の励起子と思われる発光が見られたが、そのスペクトルは約20meVの間隔をおいた2つのピークからなる構造を示し、その励起光強度および温度依存性に特異な振る舞いが見られた。すなわち低エネルギー側のピークはその発光強度が励起光強度の増加に対して比較的早く飽和し、また測定温度が10K以上に上昇すると消失してしまう、という現象が見られた。また磁場中でのPL測定を行ったところ、低エネルギー側の発光ピークの方が巨大Zeeman分裂によるred shiftが小さく、また磁場の増加に伴い発光強度が大幅に増加するという結果が得られた。これらの2つの発光ピークの起源に対して、今のところ明確な描像を得るには至っていないが、ドット中の励起子とMn^<2+>スピン間の相互作用に起因する何らかの効果によるものと考えて検討を行っている。
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