研究概要 |
本年度は,主としてZnSe/CdS系の量子箱構造を(100) GaAs基板上に作製すること・その構造や光学的特性等を制御することを試みた。従来の研究によりCdSを成長する際に、基板温度や分子線強度比など成長条件を制御するだけで基板の面方位等を変化させることなく結晶構造が制御できることが明らかになっていた。この性質を利用して量子箱の自己構築の際に形状制御を行うことを試みた。 その結果当量子箱構造においては、 ・単純な成長条件の制御のみによりドットの形状が制御可能なことが明らかになった。原子間力顕微鏡を用いてドットの形状を評価したところ、立方晶のCdSが成長できる条件においては底面が円状のドットが作製でき、立方晶のCdSが成長できる条件では長方形のドットが作製できることが明らかになった。このことはCdS特有の結晶の双安定性が関連していることと考えられ、従来広く研究されている量子ドットのいずれにおいても観測されなかった特徴であり、本量子箱構造の形状制御が特徴的に行えることを明らかにした。 ・また、他の材料系において行われているように蒸着量の制御等によってもドットのサイズ等が制御できることが明らかにした。 ・ドットからの発光特性を調べたところ、通常他の量子箱ではドットを他の材料で覆わなければ発光していなかったが、本量子箱構造ではキャップ層がない状態で明るく発光することが確認され、本量子箱構造が発光素子等への応用が有望であることを明らかにした。
|