昨年度までの成果を元に本年度はCdS量子ドットの発光の短波長化と発光素子応用を主に検討を行った。その結果、 ● 昨年度までの成果ではCdS量子ドットから明るい発光が確認されたがその発光波長は青色領域には入っていなかった。そこで、量子ドットのサイズを小さくすることを試み、量子準位による発光の高エネルギー化を計った。その結果、青色領域にまで発光波長の制御が可能なことが明らかになった。これらのことより、ZnSe上の自己構築型CdS量子井戸の光学的特性は、ドットのサイズを変化させることで青色から赤色までの領域で発光色を制御できることが明らかになった。同時に本量子ドットの成長がInGaAS系量子ドットの場合等とは異なり、V-W modeであるとの知見を得た。 ● ZnSeのpn接合中にCdS量子ドットをつくりこんだ構造による青色発光ダイオードの作製を試みたところ、液体窒素温度から室温までの広範囲の温度領域において高輝度で発光する素子の作製に成功した。その動作電圧や特性の評価を行ったところ、初期的なデータであるものの、従来に得られている素子と比べても遜色のない特性を示していることが明らかになった。 発光の更なる短波長化が可能であるとの知見を得た。 ● ZnSeのかわりにZnSSe母体上にCdS量子ドットを作製することにより、量子ドットからの発光の更なる短波長化が可能であるとの知見を得た。 これらのことより、本量子ドットの基礎物性等が明らかになり、次世代の高性能発光素子実現のために望ましい材料系の1つであることを明らかにした。
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