CaF_2上に自然形成法によって形成される高密度のGa液滴にAs分子線を供給することで高密度のGaAsの三次元量子構造を作製し、フォトルミネッセンス(PL)測定により光学特性を評価し、トンネル注入型の光デバイスの可能性を探ることを目的で行った。 まずSi(111)基板上にMBE成長した膜厚20nmのCaF_2表面に、自然形成法でGaがどのように形成されるか調べた。基板温度を室温以下に冷却することで10^<11>cm^<-2>という高密度のGa液滴を得ることに成功した。この液滴はGaの供給量を増やせば合体によってそのサイズを大きくする一方、密度が減少していくことが分かった。そこでGaの堆積量を減らした結果、7×10^<11>cm^<-2>という高密度でGaドット構造が得られた。 次にこの液滴に条件を変えてAs分子線を供給することでGaAs化することを試みた。Ga液滴にAs分子線を照射してからアニールする方法、液滴の昇温後As分子線を照射する方法およびGaとAsを高温で同時供給する手法について、その組成比をEPMA法で調査したところ、いずれの場合においてもGaとAsの組成比が1:1となりこれらの手法によりGaAsが形成可能であることが分かった。これらのドットをAlGaAsまたはCaF_2で埋め込んだ試料も作製して併せてPLで評価したところ、As分子線の照射後アニールを行い作製した埋め込んでいないGaAsドットからPLを観測した。発光波長はわずかながら高エネルギー側にシフトしていたが大きな量子サイズ効果の観測には至っていない。今回作製したドットのサイズは約10〜20nmと比較的大きいためと考えられる。今後はサイズ縮小し、密度を上げることで量子サイズ効果の得られる条件を検討し、光デバイスへの応用を考える。
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