研究概要 |
本研究では,導電性基板上への選択成長によるGaN系面発光レーザ構造を製作することを目的として,格子歪みが発光特性に与える影響の研究を行った. GaN系では開発されているデバイス構造は格子整合が満たされない材料系が用いられている.デバイス製作に主に用いられるGaN系材料は,従来の半導体レーザで用いられているIII-V族材料系とは異なり,ウルツ鉱型の結晶構造を有する.このことは,結晶中に内在する歪みによる発光特性の影響,特に圧電効果の影響が無視できない. そこで電流注入に対する遷移確率の変化の関係を計算により見積もった.歪みによる圧電効果により活性層中に生じる分極電界は注入されたキャリアの空間的な分離を生じる.本計算では,注入されたキャリアが空間的に分離し,仮想的に双極子を形成して内在している分極を打ち消すモデルを想定している.半導体レーザのしきい値キャリア密度が10^<18>-10^<19>cm^<-3>程度が無歪みの場合に計算されており,この領域で1-2%の大きな歪みが存在していると,しきい値キャリア密度の大幅な上昇を起こす可能性がある.GaN系において活性層に大きな歪みを導入することはバンド構造的に光学利得の増加を生む可能性が指摘されているが,それ以上に空間的な注入キャリアの空間的分離が引き起こす遷移確率の低下が大きくなる危険性がある.しかしながら,現在GaN/Al_<0.1>Ga_<0.9>N系に生じている歪みはc軸方向に対して0.1%程度であり,高注入動作によるGaN/AlGaN系レーザによる面発光レーザの実現には問題がないと思われるが,より低しきい値動作をめざす際には歪みによる遷移確率の低下を考慮しなければならない.この場合,格子整合を実現することは重要な意味を持つと考えられる.この点からすると格子整合がとれる,もしくは近い基板が必要となり6H-SiCはその候補して有望であることがわかった.
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