本研究の目的は有機超薄膜の微視的な構造を明らかにするために、非線型光学効果の一種である光第2次高調波発生および可視-赤外表面和周波発生を利用した光学系を構築し、光学活性分子で形成される有機超薄膜の観察を行うことである。研究初年度である本年度は以下のような成果が得られた。 1.光第2次高調波発生を利用して単分子層程度の超薄膜の観察が可能な光学系を構築しその信号を得ることができるようになった。光源としては、現有設備である約80MHzの高い繰り返し周波数のモードロックチタンサファイヤーレーザーを用いた。そのため、実験時間の短縮と高いS/N比を得ることができるようになった。また、Nd:YAGレーザーを光源としたピコ秒のパルス幅を持つ中赤外レーザー発振システムを構築し、強い強度の赤外レーザー光を得ることができるようになった。そのため、単分子膜で起こる可視-赤外表面和周波発生が観測できるようになり、それを利用した振動分光が可能となった。 2.試料として用いる予定である有機シラン系の自己組織化単分子膜を製膜し、高い効率で光第2次高調波発生が起こることを確認した。有機シラン系単分子膜は、湿度等の周辺の影響を受けやすいためその製膜には細心の注意が必要である。我々はこの問題をグローブバックを用いることにより解決し、高い収率でその単分子膜を製膜することができるようになった。 以上の知見をもとに、次年度は光学活性分子で形成される有機超薄膜の微視的な構造を明らかにできるよう実験を進めていく予定である。
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