本年度は昨年度得られた窒化ニオブ薄膜の物性評価結果を元に、窒素組成を変化させた窒化ニオブ極微フィールドエミソタアレイをイオンビーム援用蒸着により形成した。シリコン基板をエッチングして大きさ数μmのコーンを形成し、その上から窒化二オブ薄膜を形成した。二酸化シリコン層を介してシリコン基板を貼りあわせてコレクタとし、エミッタとコレクタに直流の電圧を印加して電流電圧特性を測定した。測定はイオンポンプにより排気した超高真空中で行った。電子放出特性として、電子放出開始電圧、一定電流放出時の電流変動の雑音電力による評価、及びファウラー・ノルドハイムプロットの切片と傾き(SKチャート)によるエミッタ先端状態分析を行った。その結果、窒素組成の高いものほど低電圧で電子放出を開始すること、また同一の電流を放出させた場合の電流の安定性が高いことが明らかとなった。得られた電流変動の安定性は、以前検討した窒化ジルコニウムエミッタやダイヤモンド薄膜エミッタ、金属蒸着エミッタと比較してももっとも優れたものであることが明らかとなった。さらに、SKチャートを用いた解析から、窒素組成の高いものほど仕事関数が低いものと考えられる結果が得られた。これとは別にケルビン法で測走した窒化二オブ薄膜の仕事関数は、窒素組成の高い薄膜ほど低い仕事関数を有し、電子放出特性で得られた傾向と一致した。上述のエミッタアレイの他、ゲート電極一体型のエミッタアレイについても作製して、その電子放出特性の予備的な測定を行ったが、低電圧から電子放出を開始し、良好なエミッタが形成されていることが明らかとなった。
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