本研究においては、硫化亜鉛(Zns)系半導体の分子線エピタキシ-成長を行うにあたって、硫黄分子線の供給圧力を制御することにより構造・物性を制御し、ZnCdS/ZnMgSヘテロ構造を用いた紫外半導体レーザへの応用に向けた基礎研究を行った。 硫黄分子線圧を制御した条件下で、ZnSおよびZnCdS、ZnMgS三元混晶の成長を行った。特にZnMgS混晶半導体の成長において、硫黄分子線を用いない場合と比較して組成の制御性が格段に向上し、基板であるGaPと格子製合する組成であるMg20%に再現性よく制御することが可能となった。また、GaPに格子整合するZn^<0.08>Mg^<0.02>Sについては、フォトルミネッセンス励起スペクトルにおける励起子吸収のピークから、ZnSに対して、0.15eV大きいバンドギャップ(10Kにおいて3.99eV)を持つことが実験的に明らかになった。 また、グラッド層材料としてのZnMgS(Mg組成20%)層の作製に際し、GaP基板とZnMgS層の間に高温成長ZnSバッファ層を介して成長を行うと、基板とエビタキシャル成長層界面の品質が改善され、ZnMgS層の結晶性が改善されることが明らかになった。 さらに、紫外レーザへの応用に向けてにキ-ポイントとなると考えられるp型伝導層の作製のために、ベースとなるZnS半導体へのp型不純物添加の初期検討を行った。現在までのところ、p型伝導の確認には至っていないが、p型不純物種の選択について検討した。 今後、ZnMgS層のGaP基板への格子整合効果によるさらなる高品質化、ZnCdS/ZnMgSダブルへテロ構造の作成とキャリア・光閉じ込め構造の検証、ZnS、ZnMgSのp型化と紫外レーザ発振などに向けて引き続き研究を進める予定である。
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