本研究は、液晶性有機半導体を用い、(1)液晶の自己秩序化能力を用いた有機半導体配向薄膜の作製法および配向制御法を確立すること(2)有機半導体配向薄膜の電気的光学的特性を詳細に検討し、優れた電子物性を有し分子配向により光学特性を制御した新しい光電子材料を開発するための基礎的知見を得ることを目的とする。本年度得られた研究成果は以下のとおりである。 (1)高い電子輸送性を示すことを明らかにしているオキサジアゾール発色団を液晶骨格としてさまざまな分子を合成、分子構造と液晶形成能について検討した結果、長鎖アルキル基の導入ならびに分子の対称性を下げることが液晶相を形成させる上で重要であることがわかった。 (2)液晶性を示すオキサジアゾール誘導体についてその電子輸送性を評価した結果、ネマテック相よりもより秩序性の高いスメクティック(Sm)相、Sm相においてもSmA相よりもより秩序性の高いSmB相において高い電子輸送性が得られることがわかった。本研究で合成された液晶性オキサジアゾールにおいて、これまでに報告されている有機物の電子移動度としては最も高い10^<-2>cm^2V^<-1>s^<-1>が示された。 (3)フェニレンビニレンオリゴマーをモデル化合物として用い、有機電界発光素子における分子配向とその発光特性について検討した結果、分子配向は有機電界発光素子における偏光特性だけでなく発光パターンにも大きな影響を与えることが明らかとなった。これより、共振器型発光素子や導波路型発光素子において特定の発光モードに効率良く発光を結合させる上で分子配向の制御が重要であることがわかった。
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