半導体超格子構造へ電界印加を行った際に観測されるワニエシュタルク局在現象は、電気光学効果素子への応用が期待され盛んに研究なされている。本研究で用いる非対称二重周期超格子とは、厚さの異なる二種の量子井戸からなる非対称二重量子井戸構造を基本構造としそれを周期的に配列したものであり、超格子ミニバンド構造の設計に新たな自由度を与えるものである。この構造は無電界状態では、厚い井戸と薄い井戸の量子準位が結合を起こしたlowerとupperのミニバンドが作られる。電界印加によるミニバンド解離の結果、厚い井戸、薄い井戸中にそれぞれシュタルク局在準位が形成され、比較的低電界によって共鳴を起こす。光学的特性はこの共鳴状態を反映したものとなる。 平成9年度の実績は以下の3点であり、非対称二重周期超格子のワニエシュタルク局在現象を理解する上での基本的な新概念を明らかにできたと考える。 1.遷移の二重性:空間的直接遷移、間接遷移とも、正孔の局在の仕方によって二種類ずつできる。 2.間接遷移の選択的出現:二重に生じるべきはずの空間的間接遷移成分のうち実際に観測できるものはその一部である。 3.選択制の制御:間接遷移における選択制は、井戸間結合状態の強さを反映したものであり、井戸間結合の強さ、つまり障壁厚を変化させることで間接遷移の出現の仕方をコントロールできる。
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