半導体超格子構造へ電界印加した際に観測されるワニエシュタルク局在現象は、電気光学効果素子への応用が期待され、盛んに研究されている。本研究で用いる非対称二重周期超格子とは、厚さの異なる二種の量子井戸からなる非対称二重量子井戸構造を基本構造とし、それを周期的に配列したものであり、超格子ミニバンド構造の設計に新たな自由度を与えるものである。フラットバンド状態では、厚い井戸と薄い井戸の量子準位が結合を起こしたlowerとupperのミニバンドが形成される。電界印加によってこれらは互いに共鳴しあい、シュタルク階段遷移はこの共鳴状態を強く反映したものとなる。この共鳴状態は非対称の構造を設計することにより制御できるわけであり、非対称二重周期超格子は特に電界印加時のワニエシュタルク局在現象を制御するのに非常に適した構造であるといえる。 昨年度の成果では、非対称二重周期超格子の1.遷移の二重性、2.間接遷移の選択的出現、が明らかなっており、さらに障壁層配列変調という構造パラメータの導入が、3.選択制の制御、に結びつくとの知見を得ている。本年度は、さらに超格子層配列反転という構造パラメータの重要性をデモンストレートし、以下の2点を明らかにした。 4.超格子配列反転による空間的直接遷移成分の電界誘起ブルーシフト量の変化 5.空間的間接遷移成分における波動関数局在状態の制御 これによって、非対称二重周期超格子のワニエシュタルク現象を理解する上で重要な基本概念はほぼ理解できたと考えている。
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