強誘電性液晶(FLC)および反強誘電性液晶(AFLC)を光書き込み型空間変調器(OASLM)として利用するために、それぞれの光スイッチングおよび光書き込み特性を評価した。 まず5種類のFLCにメチルレッド(MR)をドープして光スイッチング特性を検討したが、FLCは直流電圧に対する閾値を持たないため、直流バイアス下での光スイッチングは困難であった。そのため、AFLCを中心に研究を展開した。 MRをドープした4種類のAFLCでは既報のような光スイッチングが行えることが確認できた。その過程において、雑誌論文(Jpn.J.Appl.Phys.36(1997)L1035)に報告した試料では、Ar^+レーザーを照射することにより強誘電-反強誘電相転移が起こり、この相転移を利用した光スイッチングが可能であることが分かった。その後、AFLCに添加する色素濃度を上げるとAFLCの配向性が低下するためにOASLMとしての感度が低下することが明らかになったので、分子内にアゾ基を有するAFLCの評価を行った。しかし、このAFLCの場合も吸収ピークがAr^+レーザーの波長(514.5nm)とずれているために感度の向上は見られなかったが、興味深い知見が得られた。本液晶に対し直線偏光を照射すると、アゾ基のトランス-シス異性を繰り返すことによりスメクティック層の法線が直線偏光と直交するように再配向する。この現象を利用し、ポンプ光の偏光方法によりプローブ光の透過率を制御することができる。また、直線偏光照射による永続的な書き込みが可能であるので、光記憶として応用可能である。本書き込みによる空間分解能は23lp/mmであった。
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