本研究では、強誘電性液晶(FLC)および反強誘電性液晶(AFLC)を光書き込み型空間変調器(OASLM)として利用するために、それぞれの光スイッチングおよび光書き込み特性を評価していった。その評価により明確な直流電圧閾値を示すAFLCを研究の中心に据え、さらに色素濃度を向上させても配向性を低下させないために分子内に光感受性の官能基を持たせたAFLCを液晶材料として選択した。 今年度はアゾ基を分子内に有するAFLCの光書き込み特性を中心に評価を行った。この反強誘電性液晶は配向性を低下させる色素をドープする必要がないため高空間分解能が期待できる。このAFLCにアルゴンレーザーの直線偏光を照射するとスメクティック層の法線が偏光方向と直交するように再配向することが明らかになった。したがって、従来のように反強誘電-強誘電相転移の閾値以下の電場を印加しておき、光照射によって相転移を起こさせ書き込みを行う他に、電場を印加せずに直線偏光を照射することでも光書き込みが可能であった。 空間分解能をテストターゲットと干渉縞書き込みによって調べたところ、テストターゲットでは20lp/mm程度であったが、干渉縞は30lp/mm程度の書き込みが可能であった。光再配向させるとセルが細かなマルチドメイン状に変化し、この組織が空間分解を左右している。光再配向は上記のように電場印加せずに起こすことができるが、光照射時にスメクティック層の層変形スイッチングを起こさせるように三角波電場を印加しておくと、配向性が改善し分解能が向上することが分かった。用いたAFLCが反強誘電相を示すのは、100℃前後であるので、この変調器を実用化するためには、反強誘電相を室温付近に低下させることが必要である。
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