自然形成法によって、II-VI族半導体の量子細線の作製に成功した。また、顕微分光法などによって、これらの量子構造の光学的性質について研究を行った。 Zn_<1-x>Cd_xSeの量子細線の自然形成は、選択成長と組成変調の二つのメカニズムが同時に発生することによって実現された。へき開によって得られたGaAs(110)面に、常にステップが存在する。このような面上へZn_<1-y>Cd_ySeを結晶成長すると、ステップのトップエッジに優先的に成長する現象が観測された。これによって、ステップのトップエッジにて成長膜が厚くなる。そして、平坦ではない表面への混晶の成長は混晶組成の編析が発生しやすい特徴がある。これらのことより、ステップのトップエッジに組成の異なるZn_<1-x>Cd_xSe(x>y)量子細線が自然に形成された。オージェ電子分光法で、細線のCdの組成が平坦な場所のCdの組成より少なくとも10%増えたとわかった。xが大きいほどZn_<1-x>Cd_xSeのバンドギャップが小さくなるので、電子や正孔がZn_<1-x>Cd_xSe細線へ閉じ込められる。このような自己組織した量子細線の長さは、これまでの報告より遙かに長く、ミリメータルまで及んだ。また、化学エッチングなどのプロセスがないので、高品質の細線が期待できる。光学測定によって、このような細線の形成が確認された。カソードルミネッセンス法によって、細線からの発光イメージが観測された。また、1次元構造が有する量子閉じ込め効果を反映し、細線の発光が細線方向に強く偏向している。 また、多重量子井戸のへき開面上へ単一量子井戸を成長することによってZnCdSeの量子細線も作製した。このような細線は歪変調を利用し、ナノスケールの細線が作製できる。
|