本研究の目的は、リアルタイム光電子分光による半導体表面準位同定法を開発することにある。そのため、薄膜結晶成長中に光電子スペクトルを測定でき、また同一装置、同一時間に角度分解光電子分光測定を可能にする必要がある。本年度は実験装置の整備を行い、これを用いて予備的な幾つかの成果を挙げた。以下にそれらをまとめる。 1.実験装置の整備 リアルタイム対応光電子アナライザーを製作・設置し、その測定制御システムを立ち上げた。この装置は光電子励起源と光電子アナライザー、パルス型試料通電回路、及び光電子検出と試料通電との同期制御を含む自動測定システムからなっている。 2.リアルタイム光電子分光測定 リアルタイム光電子分光を用いてシリコン表面の初期熱酸化過程の予備的な測定を行った。酸素ガスによるSi(100)表面の熱酸化中にSi2p内殻準位を測定した結果、酸化温度により2種類の酸化様式が存在することが判明した。1つは650°C以下でのランダム吸着様式で、1つは650°C以上での2次元核成長様式である。さらにSi2pサブオキサイド成分を解析し、清浄表面から酸化がどのような経路を通って進行するかをシミュレートした。
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