研究概要 |
純水がPTFE(商品名テフロン)のような高分子板上を流下する際に、高分子表面が負に帯電し,純水が正に帯電することが知られている.この現象について定性的な議論はこれまで行われてきたが,定量的な議論はほとんど行われていないのが現状である.本研究ではこのような純水と高分子の接触帯電現象の定量化を目的とし、数値計算によって帯電した純水液滴内の電荷分布を計算した. モデル化のために次の仮定をおいた.(1)水中の正イオンはGouy-Chapmanの電気2重層モデルにしたがって分布する.(2)液滴内部の電荷密度と,液滴中央から見た液滴内部電位はPoissonの式によって関係づけられる.(3)液滴内部の電荷密度とイオンの電荷数および数密度はBoltzmann分布則によって関係づけられる. 数値解析のために,次の仮定を設けた.(4)液滴形状は球形とし,液滴外部の電荷電荷の影響を無視する.(5)水中のイオンはH^+およびOH-のみとし,液滴中のいたるところでイオン積[H^+][OH^-]は一定の値をとるものとする.仮定(5)は純水は高分子板を流動する際に,OH^-を高分子板上に残すことにより,電気的中性([H^+]=[OH^-])が崩れることによって帯電することを意味する. 数値条件としての液滴1個の電荷量,寸法などは実験によって得られた値を採用した.上記の仮定の下で計算を行った結果,純水液滴中の正電荷の95%以上が半径99.8%より外側に存在することを確認した.
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