半導体表面・界面に存在する水素に関連した研究は、その物理的、化学的な性質を解明しようとする基礎的観点と水素終端表面に発現する新しい物性を半導体プロセスの低温化や薄膜の自己組織化による新機能誘起などに利用するという応用的観点の双方からその重要性が認識され、最近特に関心が高まっている。そこで、金属蒸着半導体表面に水素原子が吸着したときの、水素による表面物性・表面形態の変化を走査トンネル顕微鏡(STM)、イオン散乱分光法(ISS)によって調べた。以下に得られた知見を示す。 ビスマス(Bi)原子をSi(111)表面に吸着させると、√<3>×√<3>構造が得られるが、この√<3>×√<3>構造にはBiの吸着量が1/3MLと1MLの2種類存在することが報告されている。我々は、このような2種類の√<3>×√<3>構造が存在する表面に原子状水素が及ぼす影響をSTMを用いて調べた。水素吸着によりこの表面が√<3>×√<3>構造から1×1構造に変化することがわかった。これは、Si-Bi結合が吸着水素によって壊され、基板表面は水素が終端されたことを示している。Bi吸着量が1/3MLの領域の方が吸着水素により壊されやすいこともわかった。Bi吸着量により反応速度に差がでた原因として、Biが1ML存在する領域ではBiが多量に存在するために水素がSi基板表面に到達しにくいためであろうと考えている。さらに、Siとの結合を切られたBi原子は、Ag/Si系の時とは異なり、クラスターを形成しないことがわかった。
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