本研究の目的は、系の励起状態量子波束を自由に制御できるようなフェムト秒光パルス(tailored femtosecond optical pulse)の発生法を開発すること、ならびに、得られたtailored femtosecond optical pulseを用いて、今まで行ってきたポンプ・プローブ測定技術を発展させた、系の励起状態量子波束の制御を行うことである。 本年度は、1.空間位相変調器を用いたフェムト秒光パルスの位相補償・波形整形の計算機実験、2.整形フェムト秒光パルスによる励起状態量子波束運動制御の計算機実験を行った。 ・1.まず、空間位相変調器を用いたフェムト秒光パルスの位相補償によるパルス圧縮計算機実験を行った。この方法は、非線形ファイバーを伝播したフェムト秒光パルスの位相補償に、従来の回折格子対を用いるのではなく、空間位相変調器を用いる。従来法は2次の位相補償した行えないが、本方法は、任意の位相に対し位相補償を行うことができるという利点をもち、その圧縮効率も向上している。さらに、圧縮後のフェムト秒光パルスを波形整形することにより、30THzの繰り返し周波数を持つ光パルス列の作製も可能であることを示した。 ・2.波形整形したフェムト秒光パルスを、ある物質系にポンプ・プローブタイプの構成で入射した際、励起状態の量子波束の運動がどのようになるかを計算機実験により解析した。その結果、光パルスのチャープおよびポンプ・プローブの遅延時間が励起状態の量子波束の運動に影響をあたえ、これら二つのパラメータを変化させることちより、励起状態波束制御が可能であることを明らかにした。
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