第一年度の研究ではz軸伝搬Ti拡散導波路を用いてQスイッチ導波路レーザを実現した。この場合、QスイッチングにはLiNbO_3の電気光学テンソルr_<61>、を介した電気光学変調を用いた。しかし、より効率の良い変調のためには最大テンソル成分r_<33>の利用が必須である。そこで本年度は、r_<33>が利用できる、Z板Y伝搬Ti拡散導波路を用いた導波路レーザの実現の検討を行った。得られた成果を以下に示す。 1) Ti拡散条件検討:導波路レーザの基板としてもちいる、Nd熱拡散Z板MgO添加LiNbO_3上でのTi拡散導波路作製の報告例はこれまでなかった。そこで、予備実験として、Ti拡散導波路作製条件の検討を行った。Ti薄膜を堆積した基板を水蒸気を含ませた酸素雰囲気中で1070℃20時間熱処理することで、平滑な拡散表面を持つ比較的低損失な導波路が得られることがわかった。導波路伝搬損失は1dB/cm以下であった。 2) 導波路レーザ試作:1)で得られた成果を元にして導波路レーザを試作した。導波路共振器長14mmのデバイスを波長809nmにおいて光励起し、1093nmにおける連続レーザ発振を達成した。Z板Ti拡散LiNbO_3導波路レーザでは世界ではじめての連続発振である。発振閾値は27mWであった。理論予想発振閾値は2mWであるので、得られた結果はこれと大きく異なる。その原因の一つにTi拡散導波路内での光損傷があると考えた。これを検証するため、デバイスを120℃に維持し、光損傷の影響を軽減した状態での発振を試みた。閾値が7mWまで大きく低減できた。今後、MgOドープ濃度の検討や、別のドーブ材料の検討などの、室温での光損傷軽減のための工夫が必要である。
|