研究概要 |
本年度は、申請者が考案した新しいスキームでの光音響分光での検知の実践を主体として行なった。当初の予定通り、波長を変えることができないものの、非常に安定して使用できるQスイツチNd:YAGレーザーの第二高調波(波長532nm)を使用し、水素(H_2)およびメタン(CH_4)の検知実験をおこなった。波長532nm、100〜200mJのレーザービームを直径5mmにコリメートして、長さ2mのラマンセルに入射した。ラマンセルには検知対象ガスと同じガスを1〜10気圧の高圧で充填した。まず、ラマンセルから取り出されるストークス光の特性を測定し、光音響ラマン分光法に適用した際に最も良好な信号が得られるように最適化した。その結果、ラマンセル内圧力は水素で0.9気圧、メタンで5気圧と低い圧力の方が、ラマン変換効率は下がるものの、基本波光とストークス光の時間的・空間的マッチングが良好な事が重要であり、信号SN比の向上につながることが分かってきた。 こうした最適化の後、得られた基本波光とストークス光を集光しつつ、光音響セルに入射した。光音響セルには窒素(N_2)ガスで希釈した測定対象ガスを1気圧で充填し、発生した音響信号をガラス製の共鳴管と高感度マイクロフォン(小野測器,MI-221)を用いて、オシロスコープで測定し、FFTを通して共鳴周波数付近を積算して光音響信号を得た。共鳴管やマイクのアラインメントについても最適化を行なった結果、H_2で2ppm、CH_4で1ppmの検知下限を達成し、本法が実際に高感度ガス検知に適用可能であることを初めて示した。 今後はこうした結果をふまえ、検知感度の向上、他のガス類などの検知、同様のスキームが適用可能なガス分光検知について研究を行なう。
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