半導体基板にそのバンドギャップエネルギー以上のフォトンエネルギーを持った光(励起光)を照射し、自由キャリア(正孔・電子対)を発生させることによって、サブミリ波帯電磁波に対する基板の複素屈折率を変化させることができる(自由キャリア分散)。この複素屈折率の変化量は光照射により生成された自由キャリア密度により決定されるため、光によりサブミリ波帯電磁波の反射、透過特性を随意に制御することが可能である。近年、この光照射半導体基板によるサブミリ波変調法の原理検証実験が行なわれ、本方法はサブミリ波帯における有効な信号処理技術として注目されている。本研究ではこの光照射半導体基板をサブミリ波ガスレーザーの共振器に適用することにより、光によるサブミリ波レーザーの発振制御、具体的には従来不可能とされていたサブミリ波レーザーのQスイッチ動作を実験的に確認すること、さらにQスイッチ動作の確認後、レーザー共振器系の最適化、実験と理論との詳細な照合を計ることを目的としている。主要な成果は以下の通りである。 ・サブミリ波レーザーのガス媒質としてCH_2F_2、自由キャリアの励起光源すなわち反射率の制御光として波長1.06μmのパルス発振Nd:YAGレーザーを用い、サブミリ波レーザーのQスイッチ動作を実験的に確認することに成功した。現在までにCW出力の約2倍のピーク出力を持つサブミリ波パルスを得ている。今後、光照射半導体基板の構造の改良、レーザー共振器系の最適化を進め、更なる高出力化を目指す予定である。 ・本光制御型サブミリ波レーザーシステムにより、サブミリ波帯におけるネマティック液晶材料の複素屈折率を測定することに成功した。
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