大気中における表題相互作用の起源を解明するために、1.相対湿度に対するシェアフォース相互作用の詳細な測定、2.シェアフォース相互作用の定量化、及び、3.プローブ・表面間の接触位置測定を行った。既に我々の研究で定性的に分かっていたシェアフォースの湿度依存性を詳細に研究した結果、湿度の増加に対して相互作用距離が減少し、40%程度で急激な減少を示す事が初めて明らかになった。次に、様々な横バネ定数(数N/m-数10N/m)をもつプローブを用いて、シェアフォース相互作用の定量化を行った。その結果、バネ定数の増加に対して、相互作用距離が徐々に増加する傾向の存在を明らかにした。この実験結果は、シェアフォース相互作用が、単純な遠隔相互作用では説明できず、プローブ・表面間の接触等が寄与している事を示唆する。この事を検討するために、測定した相互作用力の大きさを、調和振動子モデルによる理論計算結果と比較した。その結果、測定した相互作用力が、過去に提案された何れの遠隔相互作用より大きく、プローブと表面の接触が、シェアフォースの重要な要因である事がわかった。そこで、プローブ・表面間の接触位置を正確に測定するために、プローブと表面に導体である金属を用いて、シェアフォースとトンネル電流の同時測定を行った。その結果、シェアフォース相互作用が生じている位置で、トンネル電流が流れ始める事が初めて分かった。しかし、この結果は未だ、定量的には評価できていない。なぜなら、このトンネル電流はパルス的電流であるので、微弱電流を高い応答速度で取り込む事が必要があるが、これは現段階の試作装置では完全に実現できていない。今後は、このトンネル電流シェアフォース相互作用の同時測定を更に進展させ、プローブと表面間の絶対位置を明らかにし、表面及び表面近傍の粘性、弾性の物性測定の可能性を評価する。
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