平成9年度は、光検出型シェアフォース顕微鏡を用いて、シェアフォース相互作用の湿度依存性とプローブのバネ定数依存性を研究した。その結果、低湿度におけるシェアフォース相互作用は、プローブと表面の間の接触相互作用に起因し、高湿度のそれは、毛管凝集力に密接に関連する事がわかった。平成10年度は、まず、1997年にRuiter等とAtia等により開発された、音叉検出型シェアフォース顕微鏡を、新たに試作した。本装置は、プローブの共振周波数変化と振幅変化;こ追従できる回路を用いる事により、シェアフォース相互作用を高精度で測定する事ができる。本装置を用いて、前年度の研究の再検討を行った結果は、光検出型シェアフォース顕微鏡で得られた結果と同様であり、測定法の違いによる顕著な違いはなかった。以上の結果は、以前にGregor等により提案されたプローブ・表面の接触モデルと多くの不一致が生じる事がわかった。研究代表者は、本結果を説明するために、プローブの振動不安定性がシェアフォース相互作用と密接に関係している事を提案した。 高湿度におけるプロープと表面間の接触時間とシェアフォース相互作用の関係を調べた結果、毛管凝集力に起因する相互作用のヒステリシス距離は、ほとんど変化しない事がわかった。この結果は、プローブと表面が接触すると、吸着水が1sec程度で、急速に凝集する事を示唆する。 シェアフォース顕微鏡における、表面及び表面近傍の粘性、弾性の物性測定の可能性を評価するための試料の探索の中で、高分子ゲルの網目構造とその体積緩和の間に関する新たな現象を見つけた。
|