1、 味覚センサの開発:溶液の電気化学的非線形特性を定量解析し、溶液の味覚を識別するシステムの確立を行った。味覚因子を含んだ界面活性剤水溶液に交流サイン波電圧を印加し、その入出力応答をそれぞれフーリエ変換し、ハーモニックバランスの原理から非線形係数を同定した。得られた非線形係数から味覚の種類およびその濃度を識別可能でありることが明らかになった。 2、 油滴自励運動の解析および制御:界面活性剤水溶液中にニトロベンゼンを滴下するとニトロベンゼンに自発的な運動が見られる。この自励運動を矩型波電位を印加し制御することを行った。印加した矩型波電位に同期してニトロベンゼンは振動し、一定時間後に一方向性の運動が生じた。この一方向性運動の速度は、印加した矩型波電圧の周波数の増大に応じて早くなり、電位によってニトロベンゼン(油滴)の運動が制御可能であることが示された。 3、 非線形振動子を用いた情報処理システム:本研究では、非線形振動子としてBZ反応を対象とした。結合振動子に見られるパターン(一種の情報)を、非線形振動子の周期外力に対する引き込み位相という視点から調べた。単一のBZ振動子に、第二高調波を含む周期外力を加えたところ、その第二高調波に依存して引き込み位相が変化し、ある条件において、引き込みの同相、逆相の双安定状態を示したり、1/2、1/3分数調波引き込みが起こる事が示された。これらの結果は、位相ダイナミクス理論から説明することができた。また、非線形振動子を階層状に結合させた系において、様々な位相関係をもった複数の周期外力に対していつくかの類似した位相パターンの応答を示すことが示された。これらのことから、位相による情報処理システムの可能性が示唆された。
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