当初の研究目的通りに、1次元弾性体のバネと質点を用いた離散モデル化がほぼ完了した。 2次元平面を動く場合に関しては、そのモデルは連続極限で弾性論のコッセラ-理論による1次元基礎式に一致することを示すことが出来た。従って理論的に妥当なモデルであることがわかる。3次元空間における1次元弾性体の離散基礎式に関してもほぼ完成し、数値計算のプログラムも完成した。特にこの3次元空間中を運動する1次元体は、拡張されたオイラー角の導入により新しい差分方程式を得ることが出来た。得られた方程式系はソリトン方程式と密接に関係しており、2次元空間へのリダクションで変形KdV方程式の離散版に帰着させることが出来る。さらにこの方程式は連続版では特殊な場合に非線形シュレディンガー方程式を含むことが分かっており、新たに離散板のソリトン方程式を沢山含んでいることが予想される。 従ってこれらの方程式の厳密解を利用して大変形運動が解析できる可能性がある。また、本研究で得られた3次元空間を運動する1次元体の離散基礎方程式は数値計算をする際に陽解法で解くことが出来るので、従来の有限要素法による運動解析よりも簡単に精度良く計算できる利点が挙げられる。そして、得られた離散基礎方程式について境界を動かすことにより2次元平面内でのループソリトンの形成の様子を調べた。ループソリトンは曲げモーメントがない状態できれいなループになって伝わるが、曲げモーメントが入ると曲げの反力によりループの形成が困難になり、曲げモーメントがある程度大きくなるとループは形成されず単なるたわみ波に転移することが分かった。
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