前年度までの研究で得られた弾性体の離散モデルは、連続極限との対応を考えることにより3次元空間を自由に運動する場合の解析において非常に有用である事が示された。その離散モデルはコッセラー理論の離散化に相当したものになっている事が分かった。また、線形伝播の波動の群速度を調べた結果、ねじり波・たわみ波とも理論と一致し、曲げやねじりの機構についても良いモデルが出来た。 さらに数値計算する場合に置いてその新しく得られた基礎式はもともと離散であり、陽解法なので従来の様々な手法よりも速く弾性体の位置を時間の経過とともに計算してゆくことが出来る。そして離散モデルの良い点である境界条件の設定の容易さと相俟って、今回の弾性モデルは工学的な研究にも有用であることが明らかになった。次に、具体的な問題として、天井クレーンによる荷物の輸送の問題を計算し、その荷揺れが最も少なくなる輸送方法を見出すことが出来た。それはうまく振動の周期と運搬時間を合わせることにより得られた。フレキシブルな紐でも振動という概念が有用であることが分かった。さらに弾性ひもの巻き取りの際の不安定性について、その境界条件をうまくシミュレーションする事に成功した。これは宇宙技術のテザーの不安定運動でも研究されている重要な課題であるが、今後は長さが変化する場合の紐の運動の抑制法を今回の離散モデルを用いて検討してゆくことが課題である。
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