生体高分子のゲル化、ガラス化及び今回申請者が初めて観測した結晶化といった物性変化の研究は、医学・生物学と物理学の境界領域であり、特に電子工学分野においてはセラミクス材料として通信デバイス等の基板材料に応用可能である。即ち現行のガリウムやヒ素を用いた材料に比べ、今後非常に有効かつ、"地球に優しい"エコロジカルマテリアルとして大変重要である。セラミクス過程における粘弾性率及び損失率の時間変化を測定したところ、弾性率は約3桁上昇し、また、損失率がピークを持つということを明らかにした。この現象は、横軸を温度軸にとった場合の通常の高分子のガラス転移と非常に良く対応していた。この様に物性変化がある程度把握できたので、アプリケーションとしてマイクロ波平面型素子の基板材料へ応用することを試みた。マイクロ波素子は携帯端末の小型化に伴って、低背化が進み平面化している。また、大量の廃棄物による汚染も深刻化している。本年度はセラミクス基板としてバイオセラミクスのかわりに多結晶のMgO基板を用いて実験を行った。また、導体としては酸化物超伝導体を用いた。ゾル-ゲル法によりイットリウム、バリウム、銅の混合溶液を基板に塗布し仮焼成及び本焼結を行い膜を作製した。更に得られた超伝導膜を用いてマイクロ波受動素子の基本である共振器及びバンドパスフィルタを使用周波数2GHz付近で作製し、通常の金属の場合と比較して優れた特性を得ることができた。
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