昨年度までに本補助金を用いてセラミクス過程における粘弾性率及び損失率の時間変化を測定した。その結果弾性率は約3桁上昇し、また、損失率がピークを持つということを明らかにした。この現象は、横軸を温度軸にとった場合の通常の高分子のガラス転移と非常に良く対応していた。この様に物性変化がある程度把握できたので、本年度はそのアプリケーションとして、マイクロ波平面型素子の基板材料へ応用することを試みた。マイクロ波素子は携帯端末の小型化に伴って、低背化が進み平面化している。また、大量の廃棄物による汚染も深刻化している。従ってバイオセラミクスを誘電体基板として使用することは大変有意義である。まず予備実験としてバイオセラミクスのかわりに多結晶のMgO基板を用いて、また導体としては将来非常に有望な酸化物超伝導体を用いて、マイクロ波受動デバイスの基礎となるサーキットボードの開発を試みた。更に得られた超伝導膜を用いてマイクロ波受動素子の基本である共振器及びバンドパスフィルタを使用周波数2GHz付近で作製し、高周波特性の評価を行った。その結果、3段のバンドパスフィルタの場合、中心周波数1.93GHz、帯域幅2.84%における、挿入損失は、超伝導体の場合1.7dBであり通常の金属(銅:挿入損失5.5dB)に比べて非常に優れた特性を得た。
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