本研究の目的は、ソリトン系に近い振舞いをする近可積分ソリトン・セルオートマトンの構造を明らかにすることである。我々はKdV方程式、戸田方程式などのソリトン方程式系に関して、超極限という操作を通して、オートマトンモデルを構成することに既に成功している。そこで、可積分系に近い性質を持つとして近年注目されている粉体や交通渋滞に注目し、その進行波を記述すると言われている変形KdV方程式に超極限を操作をすることを試みた。その結果、KdV方程式から得られるソリトン・オートマトンを含むような、新たなオートマトンを得ることに成功した。さらに得られたモデルに数値実験を行なう事によって、解の性質を詳しく調べ、理論的にNソリトン解の具体的表式を求めることにも成功した。このオートマトン・モデルが今までのモデルと違うところは、進行波の速度がある最大速度を越えない点にある。この性質は、交通渋滞モデルにおける車が最大速度を持つという事実に対応していると考えられる。また、我々が得たオートマトン・モデルを使って交通渋滞モデルを構成しようという試みを行っているグループも存在し、今後の展望が期待される。これらの結果は、論文雑誌Journal of Physis A Vol.30 L733-L739(1997)にまとめられている。今年度は進行波状態に着目し、変形KdV方程式に焦点をあてた解析を行ったが、来年度はこれをさらに発展させ、より複雑な状態の記述も可能なセルオートマトンモデルの構築および解構造の解析を試みる予定である。
|