研究概要 |
本研究の目的は、ソリトン系に近い振舞いをする近可積分ソリトン・セルオートマトンの構造を明らかにすることである。我々は既に、KdV方程式、戸田方程式などのソリトン方程式系に関して、超極限という操査を通して、オートマトンモデルを構成することに成功している。そこで昨年度は、可積分系に近い性質を持つとして近年注目されている粉体や交通渋滞に注目し、その進行波を記述すると言われている変形KdV方程式に超極限操作をすることを試みた。その結果、KdV方程式から得られるソリトン・オートマトンを含むような、新たなオートマトンを得ることに成功した。さらに得られたモデルに数値実験を行なう事によって、解の性質を詳しい調べ、理論的にNソリトン解の具体的表式を求めることにも成功した。今年度はそのモデルをさらに高次元に拡張することを試みた。まず、KdV方程式の高次元版の拡張として知られる2+1次元離散戸田方程式の超離散化を行った。その結果、高次元におけるソリトン・オートマトンを構築することに初めて成功し、Nソリトン解などの具体的表式を求めることができた。(London Math.Soc.Lecture Notes Series 255,p334-342(1999),Cambridge Univ.Press)変形KdV方程式の高次元版の方程式を構築し、その超離散化から粉体や交通渋滞に関連した高次元のオートマトンモデルを得ることについては現在進行中であり、次のプロジェクトで継続される。近可積分ソリトン・セルオートマトンについてはわからないことが多く、やるべき事はたくさんある。本研究の成果を基に、今後ともこの分野における研究を継続していく予定である。
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