研究概要 |
本研究では,高強度石英ガラス光ファイバの遅れ破壊評価のために,同ファイバに先在する微小欠陥の水・応力誘起による成長の計測を実現することを目的とする。申請者らの先の手法を発展させ,新たに,超音波ナノフラクトグラフィ技術,すなわち欠陥成長過程を破面上に記録するための超音波の励起法およびサブミクロン領域の詳細破面観察法の総合技術を開発する。本年度は,準備として,深さ約20μmのき裂状欠陥を導入した光ファイバ試験片を用いて,超音波ナノフラクトグラフィ技術の基礎を開発した。また,先在微小欠陥の成長に関する理論的な検討も行った。以下,具体的試験法および得られた事項を列記する。 1.長さ約100mmのき裂付き光ファイバ試験片の一端を,加振用のセラミックバイモルフに固定し,さらに試験片の他端にナイロンの糸を介して重りをつるして,定引張加重試験を行った。負荷開始から破断に至るまで,同バイモルフによって微弱なたわみ振動を与えつづけた結果,破断面には,振動数やき裂成長速度に依存して,波状の凹凸が観察できた。原子間力顕微鏡によって,同破面を観察すれば,同波上凹凸の周期が100ナノメートルまで良好に計測できた。 2.申請者らの光ファイバのき裂成長計測データをもとに,さらに種々の欠陥モデルを用いて,無損傷の高強度光ファイバの静疲労試験結果(定引張荷重下の破断寿命計測)が予測できるか否かを検討した。欠陥モデルとしては,き裂およびピット(半球状窪みなど)モデルを採用した。その結果,予測と同試験結果は大きく異なり,高強度光ファイバに対しては新たな欠陥モデルが必要であることを示した。
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