研究概要 |
本研究では,細胞により構成される生命体をヒントにして従来にない柔軟性のあるセル構造材の開発を試みている.具体的には生化学のリポソームの研究分野で使用される二分子膜被覆カプセル膜のセル集合体の作成を試み,現段階までに得られた主な結果を以下にまとめる. 1.テレフタリルクロリドとヘキサメチレンジアミンの重合反応により,直径2mm程度のナイロンカプセルを作成した.カプセルをグルコース溶液に浸した後で,レシチンによりカプセル膜を被覆することでセルを作成することができた.このセルを種々の温度状態におく実験を行い,リン脂質の相転移によりカプセル内部のグルコース濃度を調節できることを確認した. 2.実体顕微鏡下で実験できる簡便な圧縮試験機を作成し,そのセルの圧縮試験を行い,その機械的特性を評価した.現段階ではまだ試験機に問題があり今後さらに装置を改良して、より有用なデータを得る予定である. 3.それらのセルを人工透析用の半透膜チューブに詰め込んだ棒状試験片を作成し曲げ試験を行った.これにより,荷重と変位の変化がセル構造特有の特徴を示していることを確認した.また,セル自体は非常に剛性が低いが集合体になれば高剛性化をはかれることを示唆していた.現状ではセル自体を結合する方法が確立していないため,セルのみによる構造体は得られていないが,今後はこの結合法を確立し同様の実験を試みる予定である.
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