熱応力解析の基礎となる積分方程式は、熱弾性問題に対する境界積分方程式と、熱伝導問題に対する境界積分方程式とからなる。特に熱応力感度解析を行うためには、境界上の変位勾配とポテンシャル勾配を関係づける超特異積分方程式の解析法について基礎的検討を行う必要がある。本年度はまず、ポテンシャル問題に関して、境界のポテンシャル勾配を関係づける超特異積分方程式の自由項の新しい値を導出し、さらに超特異積分の有限部分による評価法を新たに定式化した。これは、Guiggianiらにより従来示されていた超特異積分の評価法の誤りを訂正するものである。新しい定式化は、対応するFortranプログラムによる数値解析結果により、その正しさを確認した。その成果の一部は、日本機械学会論文集に投稿し、平成10年3月号に掲載される予定である。これに関連するものとして、薄板の曲げ問題があり、本年度は、その境界積分方程式についても、従来と異なる新しい定式化を行った。さらに、数値解析例によりその有効性を確認し、境界要素法の超特異積分の処理に関する本の1章として内容を公開した。次に、以上の研究内容を基礎として、熱弾性問題における境界の変位勾配に関する超特異積分方程式の中の自由項と主値積分、及び有限部分積分の正しい評価式を導出した。これらは離散化を行う前の任意形状の境界について導出しており、従来示されていない新しい結果である。特に、超特異積分方程式のソース点が境界の角点に位置しており、その点の両側に境界の曲率が不連続となる場合についての結果は複雑な式となるために、数式処理システムを援用して求めることができた。次年度に、この定式化の正しさを数値解析で確認する予定である。
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