研究概要 |
本年度はまず生体軟組織を構成する能動的な筋組織と受動的な結合組織との力学的相互作用について理論的側面から検討するため,血管壁に含まれる平滑筋組織と周囲の弾性・膠原線維との関係について,数字モデルの定式化と有限要素法による応力解析を行った.各要素のモデルは種々の変形解析に適用できるように汎用の有限要素解析プログラムに組み込み可能な形に定式化した. 平滑筋要素は筋の配向方向に沿って発揮される収縮応力と受動的応力の和の形にモデル化した.このうち収縮応力はひずみと活性化のレベルを表す活性化パラメータの二つの変数の関数とした.受動的応力は等方線形弾性体として定式化した.また弾性・膠原線維については非圧縮等方のひずみエネルギー密度関数で定式化して,非線形変形挙動を表現した. 有限要素解析の結果,本モデルは平滑筋の弛緩状態および強い収縮状態に対して,血圧と血管径の関係を表現することがわかった.また平滑筋配向方向の円周方向応力分布は平滑筋弛緩状態では弾性・膠原線維が応力を受け持ち,収縮状態では応力レベルが圧縮に向かって低下するとともに,平滑筋が応力を受け持つようになる様子が見られた.この結果は能動要素の活性レベルが組織内部の力学的状態を大きく変化させることを示している. また本研究では間隙組織等の微小な力の測定装置の試作も合わせて行った.本装置では液内に浮遊させた試料の一端を固定し,他端をカーボンファイバを通してステンレス製箔の片持はりの下端に連接した.片持はりのたわみはレーザ変位計で測定し,あらかじめ求めておいた校正曲線からたわみを力に変換した.試料の変形については試料上部に設置したCCDカメラにより,試料上の複数の粒子の変位からひずみを求められる.
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