研究概要 |
まず,製品は一般にいくつかの中間部品によって構成され,個々の中間部品はさらにいくつかの下位の部品によって構成されており……という製品構造の階層性に注目することによって,実体設計の全体的な設計解を「実体化ツリー」と呼ぶ木構造によってモデル化した.実体ツリーにおいて,根ノードは製品を,個々の葉ノードは原材料あるいは購入部品を,その他の個々のノードは原材料から加工された部品あるいはサブ組立された中間部品を,それぞれ表している.また,個々のアークは,子ノードに対応する下位の部品を親ノードに対応する上位の部品に交換する,加工作業,組立作業などの作業を表している.次に,材料費を個々の葉ノードにそれぞれ対応させ,加工費を個々のアークにそれぞれ対応させることによって,当該製品にかかる製造原価を実体化ツリーと関連させて表現する方法を導入した.さらに,実体設計の段階で,部品の一体化,材料・形状の変更などの製造原価低減のための部分的な設計変更を行ったときに,それが当該製品の全体に与える影響を実体化ツリーに基づいて評価しながら,最も効果的な設計変更を順次行っていくための方法論を展開した.これによって,DFMA,VA/VEなどの従来の製造原価低減策を,より総合的な観点から体系的に再統合することが可能となる. 今後の課題としては,実体設計段階で個々の材料費,加工費などの製造原価要素をできるだけ少ない労力で,できるだけ精度良く評価・推定するための方法論の開発,製造原価低減に加えて実体設計解の品質面を評価・改善していくための方法論の展開,さらに,単なる製造原価だけでなく維持,廃棄,リサイクルなどにかかる原価も含めたライフサイクルコスト全体を低減するための新たな枠組みの構築,などが挙げられる.
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