研究概要 |
本研究は,延性モード加工中に発生する脆性材料の超精密加工表面層マイクロクラックを検出し,クラック深さを定量的に評価できるインプロセス計測技術の開発を目的としている. 平成10年度は,マイクロクラック深さ推定法を確立するため,レーザ後方散乱光強度パターンとマイクロクラック深さの関係について詳細な電磁波散乱シミュレーション解析を行った.さらに本測定原理の有効性について検証するため,新たなマイクロクラック測定評価アルゴリズムの構築および前年度に開発した基礎実験装置の改良を行い,以下のような研究成果を得た. 1. 計算機シミュレーション:前年度に構築した電磁波散乱シミュレータを用いて,マイクロクラック深さと入射方向に散乱する後方散乱光パターンの特性を調べた.深さ10〜70μm程度のマイクロクラック深さと後方散乱光パターンとの関係を解析し,後方散乱光パターンの周期的構造からマイクロクラックの深さを定量的に評価できる可能性があることを明らかにした. 2. 実験装置の改良:前年度構築した基礎実験装置に,高精度移動ステージや高倍率観察顕微鏡ユニットおよび偏光素子を組込むことによって,集光レーザビームの入射角および偏光状態の高精度な調整を可能とし,より高感度な後方散乱光パターン検出光学系を構築した. 3. マイクロクラック測定評価アルゴリズムの構築:検出された後方散乱光パターンの周期構造の解析によって,マイクロクラック深さを推定できる独自の後方散乱光パターン処理アルゴリズムを構築した. 4. ガラス表面マイクロクラックによる深さ推定実験:ダイヤモンド圧子によって深さ10〜70μm程度のインデンテイション・マイクロクラック試料を作成し,後方散乱光パターンを測定した.後方散乱光パターンの周期構造をマイクロクラック測定評価アルゴリズムを用いて解析し,本技術によって任意の方向に進展したマイクロクラックの検出および深さの定量的評価が可能であることを明らかにした.
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