本研究では、摩擦支援による微細粒子の焼結現象を利用したセラミックスのポアフリー鏡面を形成する新しい技術を確立することを目的とした。 昨年は、セラミックス同士のすベり摩擦を利用したポアフリー鏡面加工のための加工条件のひとつとして、アルミナ同士のすベり摩擦によるマイルド摩耗面の形成条件を明らかにした。これは、すベり摩擦により、表面を平滑化さらに鏡面化するための必要条件である。 本年度は、ポアフリーの鏡面を実現するためのもう一つの加工条件として、摩耗粒子の摩擦過程中のその場焼結のための必要条件を検討するために、以下の2つの実験を新たに導入した。 (1) 1軸方向の静的圧縮力及び温度を変化させたアルミナの微細粒子の超高圧焼結実験 (2) 接触圧力と温度を変化させた接触面内に意図的にセラミック粉体を介在させた後にセラミック粉体にすベりを負荷するモデル実験 これら2つのモデル実験の結果以下の結論を得た。 (1) 静的な状態におけるアルミナの焼結可能条件(接触圧力と温度)を満たす摩擦条件下において、接触面下に存在するアルミナの微細粒子は焼結される。 (2) サブミクロンオーダのアルミナ粒子に900℃かつ2GPa以上の接触圧力条件下でのすべり摩擦を負荷することにより硬度4GPa以上相対密度94%以上の焼結体が形成される。 (3) マイルド摩耗の発生条件及び静的な状態におけるアルミナの焼結可能条件を同時に満たすとき、無潤滑下のすベり摩擦によって最大高さ500m程度のポアフリー鏡面が形成される。
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