初年度(平成9年度)は、研究室所有の摺動摩擦試験機を用いてPVAゲルの損傷状態の評価、および、研究室所有のモアレ縞観察系を用いたPVAゲルの変形挙動・潤滑挙動のリアルタイム観察を行った。従来PVAゲルの損傷過程やPVAゲルの変形挙動についてはなにも実験的な情報が提供されていないこともあり、本年度は基礎的なデータ収集を行うこととした。 PVAゲルの損傷状態評価に関しては、一定速度で回転するステンレス製シャフトを一定圧力でPVAゲルに押し付け、摩擦係数と表面状態の経時変化に注目した。試験条件 は、押し付けシャフト周速0.1m/s、および0.2m/sの二種類として、周速の影響をまず検討するとととした。(シャフト押し付け荷重1.5N一定、室温環境下) その結果、 ・摩擦係数は試験開始直後の値から若干低下するものの長時間(4時間程度)にわたって安定した値を示すこと ・安定期の摩擦係数はシャフト周速に依存すること 安定期の長さはシャフト周速に依存しないこと が明らかとなった。表面損傷とこれらの挙動の対応をとるためには、表面損傷観察用に十分な数の試験片を用意する必要があり、PVAゲル作成に手間を要することから現状では全体像を把握するまでに至っていない。 PVAゲルの変形挙動に関しては、モアレ法を用いてスクイーズ効果による変形挙動をリアルタイムに観察したところ、スクイーズ膜の生じている時間に対する負荷荷重依存性が、弾性率によって異なることが明らかとなった。 これらの知見に対しては、従来理論解析で述べられていることではないため、次年度の研究において詳細に検討していく予定である。
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