本研究は、誘電緩和と力学的緩和の挙動の類似性から、誘電緩和測定により得られる緩和時間の温度、圧力依存性を用いて、潤滑油の高圧レオロジー特性を予測しようとするものである。 予測の基礎データとなる常圧下のレオロジー特性を測定するための粘弾性測定装置を設計、製作し、定常流粘度の測定により、装置の調整を行った。またポリフェニルエーテル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジルおよびポリプロピレングリコールを使用し、100Hz〜1.5MHzの周波数範囲で、誘電緩和測定を行なった。測定は大気圧下で温度を変化させた場合と、温度を一定に保ち圧力を変化させた場合の2通りを実施した。ポリプロレングリコールに関しては、分子量の異なる5種類の試料を用いた。ポリプロピレングリコール以外の試料では、一つの緩和のみが観測された。ポリプロピレングリコールでは分子量2000以上の試料で、二つの緩和の存在が確認されたが、分子量1000以下では一つの緩和のみが観測された。同一の試料では、緩和曲線は測定を行った条件の範囲において、その形状が温度および圧力によってほとんど変化しないことが、測定を行ったすべての試料について明らかとなった。緩和時間の温度あるいは圧力に対する変化は、自由体積理論に基づいて導かれた式により表すことが可能であった。温度と圧力を一括して取り扱うことも検討してみたが、測定データを満足できる精度で表現可能な関数を見つけることはできなかった。
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