オイル・エア潤滑のように微量の潤滑油を連続的に供給した場合、定常状態では供給油量と排出油量が平衡し、軸受内に残存する油量は一定に保たれている。この軸受内の残存油量と供給油量の定量化することと、その時のEHL油膜の厚さを評価することを試みた。 1. 予め定量した微量油剤を軸受内に供給し運転した場合の転動体自転挙動を測定し、そこから油膜厚さ(スタベーションの程度)を推定した。この結果とオイル・エア潤滑時の転動体挙動の測定結果を比較することで以下の知見を得た。 (1) 軸受内に残存する油量は単位時間に供給される潤滑剤の量の増加に伴い増加する。 (2) 潤滑油量が極端に少なくなると、自転滑べりはなくなり急激なコントロール面の復帰が生じる。すなわち、接触面摩擦が急増する。この時の軸受内の残存油量は、軸受内に均一に潤滑油が存在するとすれば約10μm程度である。連続供給時の転動体挙動がこの状態となる供給油量を調べれば、連続供給時の残存油量の絶対値と潤滑条件としての限界値が分かる。 2. スタベーションによる油膜厚さの減少を、接触部前方に付着する油膜厚さをパラメーターとして計算できるようEHL解析理論にElrodのアルゴリズムを導入した。さらに、繰り返し転動に伴う油膜の減少を評価できるように、出口油膜形状を初期値とする張力による転送面への再流入の計算をEHL解析と結合した。この計算手法により以下の知見が得られた。 (1) 転送面への付着油量が少ないと油膜は薄くなるが、薄くなればなるほど圧力流れによる側方洩れは減少し、付着油膜厚さと中心部EHL油膜厚さの比は、密度化の逆数に漸近する。 (2) 付着油膜が薄ければ、張力による再流入の効果は実用軸受の速度範囲では、接触領域の端部にしか現れず、中心部油膜厚さにはほとんど影響を及ぼさない。また。この時の転送面中心付着油膜厚さと中心部EHL油膜厚さの関係は、張力による再流入を考えない場合の一様付着油膜厚さを中心部EHL油膜厚さの関係とほぼ同じである。
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