著者はこれまでに、気泡を含む液体中を伝わる非線形圧力波(衝撃波)の伝播特性に関する実験的・数値的研究を行ってきた。特に、圧力変動にともなうガス気泡の膨張・収縮運動、および気泡の空間的分布状況の非一様性、以上2点の圧力波伝播挙動に対する影響を詳しく調べてきた。また、膨張・収縮運動に対する気泡内温度分布の影響にも注意を払った。van Wijngaardenモデルをベースに、以上の影響を考慮に入れた数理モデルおよび数値解析手法を構築した。その結果、ボイド率が1%以内であれば、構築した数理モデルと実験結果が定量的によく一致することを明らかにした。 ところで、ボイド率が数パーセント程度の気泡流では、気泡間の平均距離が気泡半径と同じオーダーの大きさになる。この場合、個々の気泡の運動に対する隣接気泡の運動の影響、すなわち、気泡半径オーダーの尺度でみた局所的な気泡間相互作用が、グローバルな圧力変動特性に影響をあたえる可能性が高い。 そこで、本研究では、個々の気泡運動に対するローカルな気泡間相互作用の影響を実験的に調べた。近接して存在する2個の気泡に正弦波状の圧力変動をあたえ、これらの気泡の膨張・収縮・変形挙動を高速度カメラ撮影によってとらえた。その結果、相互作用によって、2個の気泡が並進運動を行うことがわかった。同時に、その並進運動は、無次元気泡間距離(気泡間距離/気泡半径)をパラメータとして整理することができることを示した。そして、無次元気泡間距離が5倍程度以内(5%のボイド率に相当)になると、2個の気泡間にはきわめて強い相互作用が生じることを明らかにした。
|