圧力変動をともなう液体中のガス気泡の運動を実験的、数値的に解析した。 一般に、液体中に含まれる気泡の数密度が高くなる、すなわち、ボイド率が高くなると、個々の気泡運動に対して、隣接気泡の運動が大きな影響を持つようになる。本研究では、そのような、隣接気泡間の局所敵な相互左用に着目し、現象解明の第1段階として、近接して置かれた2個の気泡が圧力変動を受けてどのような運動を行うのか、ということを調べた。 実験では、正弦波振動圧力発生装置(revitation cell)を用いて、直径0.6mm程度の気泡の加振試験を行った。振動圧力の周波数は10.6kHz、振幅は約10kPaとした。実験結果から、近接して置かれた2個の気泡は、時間とともにその気泡間距離が急激に接近することがわかった。 並行して、実験を模擬する数値解析を行った。圧縮性Navier-Stokes方程式を差分法によって解くプログラムを新たに作成し、気泡の膨張、収縮、並進運動に関する高精度な計算を行った。その結果、実験でみられた接近運動の原因が、気泡の膨張、収縮運動によって作り出される非一様な圧力場にあることを明らかにした。 以上の実験、数値解析結果を、粒子の運動に関する理論解析結果と比較した。理論では、気泡に働く付加質量力、圧力による力、および粘性抗力を考慮した。比較の結果、実験でみられた並進運動には、液体の粘性が大きな影響を持つことがわかった。また、その粘性力の効果は、膨張・収縮をともなわない粒子の運動に対する効果とは大幅に異なることもわかった。 以上より、膨張・収縮をともなう気泡の並進運動を理論的に取り扱う場合には、粘性力の影響評価に注意を払う必要があることを明らかにすることができた。
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